秋田県の南東部に位置する横手市。日本有数の豪雪地帯として知られ、冬の風物詩「かまくら」は全国的にも有名です。また、肥沃な土地を活かしたりんごやぶどうなどの果樹栽培も盛んな、自然豊かな街です。そんな横手市には、訪れる人々を温かく迎える美味しいものがたくさんありますが、中でも絶対に外せないのが、地域が誇るソウルフード「横手焼きそば」です!
数あるご当地グルメ、B級グルメの中でも、その独特のスタイルと味わいで多くのファンを持つ横手焼きそば。今回は、この「麺と卵の黄金タッグ」とも称される絶品グルメの魅力に、さらに深く、徹底的に密着していきます!なぜこれほどまでに愛されるのか、その秘密を紐解いていきましょう。
横手焼きそばとは? その定義と歩んできた歴史
まずは「横手焼きそば」がどのようなものか、その定義と歴史に触れてみましょう。他の地域の焼きそばとは一線を画す、いくつかの明確な特徴があります。
- 麺: 太くてまっすぐな「角切りゆで麺」を使用します。これが独特の柔らかくも、もちっとした食感の源です。
- ソース: ウスターソースをベースに、お店ごとにブレンドしたオリジナルのソース。多くは煮干しや昆布などからとった和風だしを加え、比較的甘口で水分量が多めなのが特徴です。
- 具材: キャベツと豚ひき肉が基本。シンプルだからこそ、麺とソースの味が引き立ちます。
- トッピング: なんと言っても、片面焼きの「半熟目玉焼き」! これが横手焼きそば最大のアイコンと言えるでしょう。
- 付け合わせ: 紅生姜ではなく、「福神漬け」が添えられます。これも横手焼きそばならではのスタイルです。
これらの特徴を持つものが、一般的に「横手焼きそば」と呼ばれています。
その歴史は戦後に遡ります。横手市内のとある製麺業者が、お好み焼き店主から「安価でボリュームのあるメニューを」と依頼され、考案したのが始まりと言われています。当時は貴重だった豚肉の代わりに安価なひき肉を使い、ゆで麺でボリューム感を出すなど、工夫が凝らされていました。手軽で美味しく、お腹いっぱいになれる横手焼きそばは、瞬く間に市内の飲食店へと広まっていったのです。
現在では「横手やきそば暖簾会」がその味と品質を守り、PR活動を行っています。毎年開催される「横手やきそば四天王決定戦」は、市民や観光客の投票でその年のナンバーワンを決める一大イベントとなっており、横手焼きそば文化の継承と発展に貢献しています。
【深掘り】なぜ旨い? 横手焼きそばを構成する要素の秘密
横手焼きそばの美味しさは、それぞれの要素が持つこだわりと、それらが織りなす絶妙なハーモニーにあります。一つ一つの秘密を深掘りしてみましょう。
生命線ともいえる「ゆで麺」
一般的な焼きそばで使われることが多い「蒸し麺」とは違い、横手焼きそばでは「ゆで麺」が使われます。なぜでしょうか? ゆで麺は水分を多く含んでいるため、柔らかく、もちもちとした独特の食感が生まれます。また、ソースが麺に染み込みやすく、味の一体感が出やすいのも特徴です。この太くてストレートなゆで麺こそが、横手焼きそばの土台を支える、まさに生命線なのです。
お店の個性が光る「特製ソース」
ウスターソースをベースにしつつも、各店が工夫を凝らしたオリジナルソースも横手焼きそばの魅力。和風だしを加えることで、一般的なソース焼きそばよりも塩味がまろやかになり、どこか懐かしい、優しい味わいに仕上がっています。水分量が多めなので、麺全体にソースがよく絡み、するすると食べやすいのもポイント。お店によって甘さ、酸味、だしの風味が異なるため、食べ比べてお気に入りの味を見つけるのも楽しみの一つです。
黄金の輝き「半熟目玉焼き」
なぜ横手焼きそばには目玉焼きが乗っているのでしょうか? その起源は諸説ありますが、栄養バランスを考えて、あるいはボリューム感を出すため、まろやかさを加えるためなど、様々な理由が考えられています。重要なのは「半熟」であること。とろりとした黄身を麺に絡めることで、ソースの風味に濃厚なコクとまろやかさが加わり、味に劇的な変化と深みが生まれます。この瞬間こそ、「黄金タッグ」と呼ばれる所以です。
名脇役「福神漬け」の存在意義
通常、焼きそばの付け合わせといえば紅生姜を思い浮かべますが、横手焼きそばでは福神漬けが定番。これも誕生のきっかけとなったお店がカレーも提供しており、その付け合わせだった福神漬けを添えたのが始まり、という説があります。甘めのソースとまろやかな卵の味わいの中で、福神漬けの甘酸っぱさとカリカリとした食感が、実に見事なアクセントとなります。口の中をリフレッシュさせ、次の一口をまた新鮮な気持ちで味わわせてくれる、まさに名脇役なのです。
旨味の源「豚ひき肉」と「キャベツ」
具材がシンプルであることも横手焼きそばの特徴。豚ひき肉は、炒めることで旨味とコクがソースに溶け出し、全体の味わいを豊かにします。また、細切れなので麺と絡みやすく、食べやすいのも利点です。そして、シャキシャキとした食感を残したキャベツの甘みが、ソースの風味とよく合います。
【実食】黄金タッグを最大限に楽しむ! おすすめの食べ方
さあ、目の前に運ばれてきた横手焼きそば。その魅力を最大限に引き出す食べ方を伝授しましょう!
- まずはそのまま一口: 麺とソース本来の味を楽しみます。お店ごとのソースの特徴や、麺のもちもち感をしっかりと感じてください。
- いよいよ黄身を崩す!: これぞ醍醐味! 半熟の黄身をぷすっと割り、とろ~り流れ出す黄身を麺全体に優しく絡ませます。ソースの風味と卵のコクが融合した、まろやかで濃厚な味わいを堪能しましょう。まさに至福の瞬間です。
- 福神漬けと一緒に: 時折、福神漬けを口に運びます。カリカリとした食感と甘酸っぱさが、口の中をリセット。まろやかな味わいの中に心地よいアクセントを加え、最後まで飽きさせません。
この味の変化こそが横手焼きそばの真骨頂。見た目のインパクトはもちろん、香り、食感、そして味の変化を五感で楽しんでください。他の焼きそばでは味わえない、ユニークで奥深い食体験が待っています。
本場の味はどこで? 横手焼きそばに出会える場所
やはり本場の横手焼きそばを味わうなら、発祥の地である横手市を訪れるのが一番です。「横手やきそば暖簾会」に加盟しているお店なら、一定の基準を満たした美味しい横手焼きそばに出会える可能性が高いでしょう。
市内には、老舗の食堂から専門店、比較的新しいお店まで、数多くの提供店が点在しています。前述の「四天王決定戦」で上位に選ばれたお店を訪ねてみるのも良いですし、地元の人におすすめを聞いてみるのも楽しいかもしれません。
また、横手市内だけでなく、秋田県内のイベントやお祭り、あるいは首都圏のアンテナショップなどで横手焼きそばが提供されることもあります。お土産用の横手焼きそばセットも販売されているので、ご家庭で本場の味を再現してみるのもおすすめです。
まとめ:単なるB級グルメじゃない! 横手の食文化を味わおう
今回は、秋田県横手市が誇るご当地グルメ「横手焼きそば」の魅力を、歴史や各要素の秘密、美味しい食べ方まで、たっぷりとご紹介しました。
もちもちの特製ゆで麺、和風だしの効いた甘めのソース、とろける半熟目玉焼き、そして名脇役の福神漬け。これらが織りなす絶妙なハーモニーは、一度食べたら忘れられない、まさに「黄金タッグ」の味わいです。
横手焼きそばは、単なるB級グルメという枠を超え、戦後の復興期から市民に愛され、育まれてきた横手の大切な食文化そのもの。その一杯には、歴史と、人々の想いが詰まっています。
秋田県横手市を訪れた際には、ぜひこの地でしか味わえない本物の横手焼きそばを体験してみてください。きっと、あなたの旅の思い出を、より美味しく、豊かなものにしてくれるはずです!